理念・活動
日本医療リンパドレナージ協会の理念
〜セラピストと患者をつなぐ、リンパ浮腫医療のプラットフォーム〜
日本医療リンパドレナージ協会の理念には、「リンパ浮腫医療に関する正確な情報、必要とされる人材や技術が、プラットフォーム(Platform)を介して届けられる」イメージが込められています。
リンパ浮腫に関する知識や情報を共有・提供できる仕組みを構築し、患者・ご家族の皆様、セラピスト、医師・医療従事者、医療機器メーカー、そして多くの関係者がつながる”リンパ浮腫医療のプラットフォーム”を形成することを目指します。そして、セラピストと患者がつながりやすい社会を築くことが目標です。
また、活動においては「真摯であること」「情報に嘘がなく、間違いのないこと」「中立的な立場であること」を基本姿勢とします。
日本医療リンパドレナージ協会の活動
日本医療リンパドレナージ協会(略称/MLAJ)は、「リンパ浮腫」、及び「リンパ浮腫治療」について社会一般への認識を高めること、リンパ浮腫治療の施術を行う『医療リンパドレナージセラピスト』を養成し、リンパ浮腫の治療環境を整えることを目的として、2002年に設立されました。
「医療リンパドレナージセラピスト」の養成
リンパ浮腫治療における専門知識と技術を習得するための『医療リンパドレナージセラピスト養成講習会』を実施しています。また、講習会を修了した医療リンパドレナージセラピストを継続的に支援するための『継続研修』を、定期的に実施しています。
「リンパ浮腫治療」の普及啓発
リンパ浮腫、及びリンパ浮腫治療について社会一般への認識を高めるための普及、啓発活動を行っております。市民公開シンポジウムや学術大会を開催し、リンパ浮腫治療に関する普及活動を行っています。
「リンパ浮腫治療」に関する相談、情報提供
リンパ浮腫治療に関する相談を受け付けているほか、ホームページ・会報などを通して情報提供を行っています。また、医療リンパドレナージセラピストが活動する全国の病院や診療所、開業施設について案内しております。(※案内できる施設については、サイト内「施設のリンク」ページからもご覧いただけます。)
リンパ浮腫に悩まれる多くの方々が安心して受けられる治療環境づくりを目指し、患者さんやご家族の肉体的、精神的苦痛を和らげ、ADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)の向上を支援することが、日本医療リンパドレナージ協会の使命です。
保険適用に向けた活動について
当協会では、リンパ浮腫治療の保険適用実現に向けた活動として、中央社会保険医療協議会(中医協)への陳情、リンパ浮腫に関連する医学学会への説明会などを含め、これまでさまざまな取り組みを実施してまいりました。
当協会の要望主旨:
- ① 患者さんへの早期情報提供として「リンパ浮腫指導管理料」新設〔2008年4月一定の患者を対象に保険収載〕
- ② 弾性着衣の療養費支給〔2008年4月一定の患者を対象に保険収載〕
- ③「複合的理学療法」の医療技術評価〔2016年4月一定の患者を対象に保険収載〕
リンパ浮腫治療の保険適用実現に向けた活動
2008年の診療報酬改定に向けた72団体の支援による「リンパ浮腫治療の保険適用の要望」に対する連絡協議会では、全国より約24万人の署名を集め、厚生労働大臣と日本医師会に提出いたしました。〔署名期間:2007年10月1~15日〕
全国各地の多くの方々の積年のご尽力の賜物として、2008年の診療報酬改定において「リンパ浮腫指導管理料」「弾性着衣療養費支給」が新設されました。
また、2009年9月に医療専門職13団体と患者会が集結し発足した『チーム医療推進協議会』の一員として、本協議会を通じ中央社会保険医療協議会と厚生労働省の「チーム医療の推進に関する検討会」に要望書を提出し、リンパ浮腫診療報酬に対する要望、専門技術と美容との区別化の重要性について説明いたしました。
これらの成果として、2010年4月1日付にて、厚生労働省医政局長より各都道府県あてに、「リンパ浮腫指導管理料」の適用回数の拡大が通知されました。さらに、2012年度からは、「リンパ浮腫指導管理料」を提供できる保険医療機関に関し拡大がありました。
2016年度には、念願の複合的理学療法(厚生労働省の正式名称は「リンパ浮腫複合的治療料」)が、一定の患者のみが対象となっていますが、保険収載されました。
そして、2020年度には、「リンパ浮腫指導管理料」、「弾性着衣の療養費申請」、「リンパ浮腫複合的治療料」について、以下のとおり見直しがなされました。
リンパ浮腫指導管理料およびリンパ浮腫複合的治療料の算定対象となる患者
鼠径部、骨盤部若しくは腋窩部のリンパ節郭清を伴う悪性腫瘍に対する手術を行った患者又は原発性リンパ浮腫と確定診断された患者
弾性着衣の療養費申請の支給対象となる疾病
鼠径部、骨盤部若しくは腋窩部のリンパ節郭清を伴う悪性腫瘍の術後に発生する四肢のリンパ浮腫又は原発性の四肢のリンパ浮腫
リンパ浮腫複合的治療料「1」の「重症の場合」の対象患者】
病期分類Ⅱ期以降の患
リンパ浮腫複合的治療料の概要につきましては、厚生労働省の資料を参考に以下の表に纏めました。
2020年度以降 | リンパ浮腫の複合的治療 | 診療報酬 | 回数・時間 |
---|---|---|---|
治療内容 | スキンケア | 重症 (ISL2期以降) 200点/1日につき 重症以外 |
重症 …40分以上/1回 治療開始月~2ヶ月以内:計11回 3ヶ月から:1回/月 重症以外 |
用手的リンパドレナージ | |||
圧迫療法(弾性着衣または弾性包帯) | |||
圧迫下の運動 | |||
スキンケアや体重管理などのセルフケア指導 | |||
対象 | 鼠径部、骨盤部若しくは腋窩部のリンパ節郭清を伴う悪性腫瘍に対する手術を行った患者又は原発性リンパ浮腫と確定診断された患者 | ||
実務職種 | 医師や医師の指導下、看護師、理学療法士、作業療法士、あん摩マッサージ指圧師(適切な研修を修了した者)(※保険医療機関勤務の場合) |
※厚生労働省の令和2年度診療報酬改定を元にMLAJ作成
今後の課題
2020年度の診療報酬改定により、鼠径部、骨盤部、腋窩部のリンパ節郭清を伴う悪性腫瘍による続発性リンパ浮腫患者および原発性リンパ浮腫患者が対象となったことで、より幅広い患者が保険の適用となりました。(「小児慢性特定疾病医療費助成制度」の対象疾患となった原発性リンパ浮腫については➜こちらをご覧ください)
しかしながら、対象に記載されていない治療法により発生した続発性リンパ浮腫、腫瘍以外の原因による続発性リンパ浮腫の患者さんは未だ対象外となっています。
それに加えて、現時点の診療報酬が実際の技術および治療の所要時間に見合った報酬となっていないこと、また、リンパ浮腫の技術について第三者機関による全国的なクオリティーチェックが義務付けられていないこと、リンパ浮腫治療を提供する施設の条件の厳しさにより実際のニーズに応えられないといった現状の改善が今後の課題として残っています。
この現状からの前進を目指し、今後とも皆様と共に当協会で取り組んでまいりたいと思います。